株式会社スタジオビンゴ と 3Dプリンタ
ストップモーション・アニメーション制作を中心に、キャラクターデザインの企画から造形などを手掛ける株式会社スタジオビンゴ。企画・造形からアニメーションの撮影までを社内で一貫して行える点がスタジオビンゴの強みです。全て手作業で制作が進められていた現場にデジタル技術とFormlabs社製3Dプリンタを取り入れることによって、作品の品質向上と制作環境の改善に成功しました。
ストップモーション・アニメーション制作の課題
ストップモーション・アニメーションの撮影はその特性上、1体のキャラクタに必要なパーツを複数用意する必要があります。そのパーツ数が増えることによってキャラクタ表現の幅が広がり作品の品質も上がりますが、それは製作工数が大きくなることにつながります。また、手作業でのパーツ制作は微妙な”違い”が生まれやすいという課題がありました。
TCT Japan 2021(2020年12月開催)にて展示させて頂いたスタジオビンゴ社の制作モデル
制作現場のデジタル化
スタジオビンゴの代表を務める土田さんは、3Dモデリングツールを取り入れ、3D原型制作を進めました。
3D原型制作の効果
3Dモデリングツールによる3D原型制作は、複数の客観的な視点での検証を行うことができ、高い品質を維持しながら、手作業での制作時にたびたび発生していた大幅な出戻りを最小限に留めることができるようになりました。
3Dプリンタの効果
3D原型を出力する3Dプリンタを導入することで、同じパーツを容易に複数制作できるようになり、制作時間の大幅に短縮することができました。それはよりクリエイティブな活動に力を注ぐことができることを意味します。
環境に起きた変化
3D原型制作と3Dプリンタの導入は作品制作環境を大きく変えました。これまでは、作業が立て込むと徹夜が続くこともありましたが、デジタル化を進めたことにより、日中はデジタル原型制作、造形モデルの後加工、撮影などに費やし、夜間に3Dプリンタでのパーツ制作というサイクルを確立できました。
ただし、すべてをデジタル化するのではなく、アナログとデジタルの共存を目指すことで、結果としてよりクリエイティブな作業に集中できる環境を整えることができた、と振り返っています。それはストップモーション・アニメーションがもつ暖かみや懐かしさといった特長をより鮮明に表現することを目指す上では必要不可欠なことでした。
3Dプリントしたパーツに表面の生地を縫い込む作業
Formlabs社3Dプリンタの評価
スタジオビンゴは、Formlabs社製3Dプリンタ『Form 2』と『Form 3+』をそれぞれ2台ずつ所有しています。それらへの評価をコメントとしてまとめました。
「『Form 3+』では、まぶたや目のような薄くて小さなパーツを造形できるようになり、生産性がさらに向上しました。」
「消耗して破損してしまうパーツも、あらかじめ3Dプリンタで多く用意しておくことで、臨機応変に対応できるようになりました。また、複数の人形を作る場合でも、一度制作したデジタル原型を基にアレンジができるので、制作点数が多くなるほど、『Form 3+』の実力が発揮されます。」
「デザインを確認しやすいため、メインはグレイの材料を使用しています。透明パーツは手作りでは難易度が高いため、透明な材料で造形します。人形を支える治具部品などは高強度の材料を使用します。」
「Formlabsの提供するソフト『Pre Form』は、他のソフトよりも優れていると思います。スライサとしての性能や、自動サポートの精度も高く、常にアップデートされている点が心地よく感じます。」
「関節などの金属パーツも、より高強度材料で造形したパーツに替えられるのではないかと期待しています。そうなると、理想的な関節を実現し、表現の幅がさらに広がるでしょう。」
「軟質材料は表現の幅を高める可能性に期待しています。」
『Form 2』と『Form 3+』の設置状況
最後に、株式会社スタジオビンゴ 代表取締役 土田さんから、ストップモーション・アニメーション業界にかぎらず、若手クリエイターへの応援コメントをご紹介いたします。
「今できる環境の中でアイデアを出して、苦労して改善を取り入れることは、何よりも素晴らしいことです。まずは自分のアイデアを形にして、作品として人に見せてください。チャレンジしてください。応援しています!」
株式会社スタジオビンゴ 代表取締役 土田様
【会社紹介】
株式会社スタジオビンゴ
187-0041 東京都小平市美園町1-4-10 タカラヤビル 3F・4F
代表取締役 土田裕之
HP: http://www.studiobingo.co.jp/
ストップモーション・アニメーション(パペットアニメーション、クレイアニメーションなど)の制作をメインに、キャラクターデザインやゲームや雑誌媒体の立体造形制作など幅広く活動しています。社内にはストップモーション・アニメーションを撮影するためのスタジオスペースを確保し、カメラ、照明などの撮影機材も備えています。また、人形や背景美術セットを造形するための3Dプリンタやレーザー加工機などの造形機材も導入しているので、ストップモーション・アニメーションの企画・造形からアニメーションの撮影までを社内で一貫して行える点がスタジオビンゴの強みです。