「業務用3Dプリンタを選ぶ際には」のコラムの中で、選定のポイントをいくつか挙げましたが、今回はその中の 造形モデルの精度 という点をほり下げてみます。
造形モデルの精度は、多くの方が最も気になるところだと思います。実際に3Dプリンタを導入されたお客様で、造形モデルの見た目は素晴らしいが、寸法精度が充分でないため当初の目的に沿った使い方が出来ないという声を聴くこともあります。そういったトラブルを防ぐためにも、造形モデルの精度とは、という視点でまとめました。
まず、造形モデル精度には、どんな物があるのかを挙げます。
寸法精度:
造形モデルの寸法が設計通りに正確に再現されているか、設計寸法と造形モデル寸法との差異を比較することで評価します。基準があるためわかりやすく、工業分野の方にはなじみのある評価方法です。
積層解像度:
3Dプリンタで造形する際の積層厚さや解像度によって、モデルの表現力やディテールがどれだけ再現されるかを評価します。一般的に、より薄い積層で造形すると、積層段差が滑らかになりますが、積層する回数が増えるため、造形時間が長くなる傾向にあります。
表面性状:
モデルの表面が滑らかで均一かどうかを評価します。「積層解像度」と似ていますが、積層厚さではなく造形方式に関連する事が多く、表面の段差、凹凸、スジなどがないかを確認します。
細部の再現性:
造形モデルの細部や小さな構造物が適切に再現されているかの評価です。造形モデル内部に存在する細い管や、モデル表面に掘られた文字などが適切に表現されているかを評価します。
これら上記と合わせて評価される事として、
バラつき精度:
一度の造形で同じ物を複数造形する場合、どの程度のバラつきがでるか、を評価します。部品製造などの目的の場合はとても重要な要素です。
繰返し精度:
同じモデルを同条件で繰り返し造形し、安定的に同等の造形モデルを手に入れることができるか、という評価になります。これも部品製造などの目的の場合は重要な要素です。
造形モデルの精度に着目すると、積層厚や解像度といったスペックに目が行きがちですが、造形方式、使用材料、造形条件(モデルの向き、配置)などさまざまな要因に複雑に関連しており、カタログだけで判断することはできません。
見た目も完璧で、寸法精度は申し分なく、材料物性も優れたモデルを造形できる3Dプリンタがベストではありますが、なかなかマッチする物はありません。
まとめ
3Dプリンタの導入目的と照らし合わせ、必ず自身の設計データで造形検証を行う事をおすすめします。また、3Dプリンタで完璧な物を作ることだけを求めず、後加工することも場合によっては必要です。許容できるレベルもしっかりと抑えておくことも必要です。